一般的なタンパク質の構造解析としてはタンパク質を結晶化させて行うX線結晶構造解析、ダイナミクス解析では核磁気共鳴法(NMR)や原子間顕微鏡(AFM)等の方法があります。しかしながら、これらの実験手法では観測できる解像度に限界があり、原子レベルでの解析や分子間相互作用の評価は非常に困難です。
MDシミュレーション |
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タンパク質は生体内の生理機能を支える重要な機能的分子であり、その機能はタンパク質の立体構造や運動特性(ダイナミクス)と非常に密接に関わっています。また、実在系のタンパク質は複数のタンパク質が会合し、安定構造を作ることで初めてその機能を示す場合が多く、またその動的構造特性はいまだ明らかとされていません。そこで、計算機上で複数のタンパク質のドッキングシミュレーションを行い、タンパク質複合体の最安定構造を見つけ出します。タンパク質複合体としてPseudomonas aeruginosa cytochrome c551 (Cyt)とPseudomonas aeruginosa azurin (Az)のタンパク質複合体の構造安定性や酸化還元反応を分子軌道法や分子動力学シミュレーションを用いて評価を行っています(図3)。
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私たちの体は細胞で出来ており、その細胞膜は生体膜(脂質二重層膜)で構成されています。生体膜は核や小胞体といった重要な器官を細胞内で守る役割を持つ一方で、水やイオンといった人体の生理に必要な物質の透過をさせる重要な役割を持っています。これらの特性は膜内の脂質分子の動的構造や温度・圧力といった物理特性と密接に関わっています。当研究室ではこれまで、脂質二重層膜へのコレステロール効果(図4)や膜タンパク質の動的構造の解析を行ってきました(図5)。これらの研究は生体内におけるシグナル伝達等の機能を有する生体膜(ラフト)の機能解明に役立ちます。
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タンパク質や酵素は生体内の反応の素過程において、特定の基質やタンパク質を認識し、相互作用や分子会合をすることでエネルギー交換や分子輸送を実現しており、生命維持に必要な様々な化学変化を起こしています。このことから、タンパク質の機能解明にはその原子レベルでの詳細な動的構造や、タンパク質同士での相互作用(分子親和性)の評価が重要とされています。当研究室では、タンパク質とリガンド分子の会合-解離過程における自由エネルギー変化を求める研究を行っています。分子シャペロンの一種であるHsp90とADPを対象として分子動力学シミュレーションを行い、自由エネルギーの変化から分子シャペロンの機能発現の解明に取り組んでいます(図6)。